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糖尿病の初期症状、見逃しやすいサイン

「糖尿病の初期症状」と検索して、当てはまる症状がないか確認しようとしている方も多いのではないでしょうか。実は、糖尿病の一番の特徴は「初期にはほとんど症状が出ないこと」にあります。ここでは、糖尿病がなぜ気づきにくいのか、進行すると現れる症状、そして健診の重要性について整理します。

糖尿病の初期は、なぜ症状が出にくいのか

糖尿病は「サイレントキラー」と呼ばれることがあります。血糖値が高い状態が続いても、体はある程度その状態に適応してしまうため、初期の段階では自覚できる症状がほとんど出ません。糖尿病を発症する前の「予備群」と呼ばれる状態が10年以上続くこともあり、この間もほとんど症状がないまま進行していくことがあります。

たとえるなら、少しずつ水位が上がっていく水槽のようなもので、水があふれ出す(はっきりした症状が出る)ころには、すでにかなりの時間が経過していることが多いのです。だからこそ、「症状がないから大丈夫」という判断が、糖尿病に関しては最も当てはまらない考え方だといえます。

「糖尿病予備群」という段階について

健診で「血糖値が高め」「境界型」と言われた経験がある方もいらっしゃると思います。これは、まだ糖尿病と診断される段階ではないものの、正常な状態からは外れつつある「予備群」と呼ばれる段階です。予備群の段階でも自覚症状はほとんどなく、健診の血液検査で初めて分かることがほとんどです。

この予備群の段階は、生活習慣を見直す最も効果的なタイミングでもあります。すでに糖尿病を発症してからの生活改善と比べて、予備群の段階での改善は、進行を遅らせる、あるいは正常な状態に近づける可能性が相対的に高いとされています。「まだ糖尿病ではないから大丈夫」ではなく、「糖尿病になる前に対応できる大事な段階」と捉えていただくのがよいと思います。

進行すると現れる症状

血糖値が高い状態がさらに進むと、次のような症状が現れることがあります。

  • 尿の量や回数が増える(多尿)
  • のどが渇きやすく、水分を多く摂るようになる(口渇・多飲)
  • 食べているのに体重が減る
  • 全身の倦怠感、疲れやすさ
  • 視界がかすむ、ぼやける
  • 手足のしびれや感覚の変化
  • 皮膚の傷や感染症が治りにくい

これらの症状は、糖尿病がある程度進行してから現れることが多く、症状が出た時点で「初期」とは言えない場合もあります。逆に言えば、これらの症状が一つもないことは、糖尿病でないことの保証にはなりません。

たとえば「のどが渇きやすくなった」という症状は、血糖値が高い状態が続いた結果、体が水分で血液の濃度を薄めようとする反応の一つです。また体重が減る症状も、食欲があるにもかかわらず栄養を十分に取り込めなくなることで起こります。これらはいずれも、体がすでに高血糖の影響を受け始めているサインであり、「症状が出た=まだ初期」と考えるのではなく、「症状が出た時点でむしろ確認を急ぐべき」段階だと理解しておくことが大切です。

「症状がないから大丈夫」という考え方の危うさ

糖尿病は自覚症状に頼って気づくものではなく、血液検査(血糖値・HbA1cなど)で初めて分かることがほとんどです。健診で「血糖値が高め」「要再検査」と指摘されても、体調に変化がないために放置してしまう方は少なくありません。しかし、症状がないというのは「大丈夫」を意味するのではなく、「まだ体が適応できている」という状態にすぎない場合があります。健診で血糖値やHbA1cの数値に指摘があった場合は、症状の有無にかかわらず確認しておくことをおすすめします。

糖尿病になりやすい方

次のような背景がある方は、糖尿病になるリスクが比較的高いとされています。

  • 血縁の家族に糖尿病の方がいる
  • 肥満、特に内臓脂肪が多い
  • 運動不足の状態が続いている
  • 高血圧や脂質異常症を指摘されている
  • 加齢(年齢が上がるほどリスクは高まる)
  • 過去の健診で「血糖値が高め」「境界型」と言われたことがある

これらに複数当てはまる方は、症状がなくても定期的に血糖値を確認しておくことをおすすめします。逆に、当てはまる項目がなくても発症することはあるため、健診の結果は毎回きちんと確認することが大切です。

特に、内臓脂肪型の肥満は、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の働きを弱めてしまうことが知られています。体重の増加そのものよりも、お腹周りに脂肪がつきやすいタイプかどうかも一つの目安になります。ただし、痩せている方でも糖尿病になることはあるため、体型だけで安心・心配を判断しないようにしてください。

放置するとどうなるか

高血糖の状態が長く続くと、血管に負担がかかり、目・腎臓・神経・血管など全身のさまざまな部位に影響が及ぶ可能性があります。

  • 目: 網膜の血管に負担がかかり、視力に影響が及ぶことがある
  • 腎臓: 老廃物をろ過する機能が徐々に低下することがある
  • 神経: 手足のしびれや感覚の変化として現れることがある
  • 血管: 動脈硬化を進める要因の一つとなり、将来的に心筋梗塞や脳梗塞など重大な病気につながることもある

これらはいずれも、症状がはっきり出るまでに時間がかかることが多く、気づいた時点ですでに進行しているケースも少なくありません。どの程度の期間でどこまで進行するかは個人差が大きく、一概には言えませんが、「症状がないうちに確認し、必要な対策を始める」ことが、将来のリスクを抑えるうえで重要になります。

健診で指摘されやすい項目

健診では、主に次の2つの項目で判定が出ます。

  • 空腹時血糖値: 採血時点での血糖の状態を示す値
  • HbA1c: 過去1〜2ヶ月の血糖の平均的な状態を反映する指標

空腹時血糖値はその日の食事の影響を受けやすい一方、HbA1cは比較的長い期間の傾向を反映するため、2つを合わせて確認することで、より正確に状態を把握できます。「要再検査」「要精密検査」の判定が出た場合は、どちらの項目で指摘されたのかを確認しておくと、受診時の説明もスムーズになります。

これらの項目は生活習慣病に関わる項目として、循環器や生活習慣病を専門とするクリニックでも確認できます。血糖値の判定と合わせて血圧やコレステロールの値も一緒に指摘されることが多く、生活習慣病はまとめて評価した方が効率的です。

日本糖尿病学会の基準では、次のような目安が示されています。

区分 空腹時血糖値 HbA1c
糖尿病型の目安 126mg/dL以上 6.5%以上
境界型の目安 110-125mg/dL 6.0〜6.4%程度

ただし、これらの数値は健診結果を理解するための一般的な目安であり、実際の診断は他の検査結果や症状と合わせて医師が判断します。ご自身の数値がどの範囲に当たるかだけで一人で判断せず、健診結果表を持って相談していただくのが確実です。

当院での確認の流れ

  1. 受付・問診(症状の有無・健診結果・生活習慣についてお伺いします)
  2. 身体診察
  3. 血液検査(血糖値・HbA1c等で現在の状態を確認)
  4. 結果に応じた今後の方針のご提案

初めての受診で「もう薬を一生飲まないといけないのでは」と不安に思う方も多くいらっしゃいますが、糖尿病の治療は薬物治療だけではありません。食事療法・運動療法を基本とした生活習慣の見直しから始め、それでも改善が不十分な場合に薬物治療を検討するという考え方が基本になります。結果を聞く前から身構える必要はありません。

「仕事が忙しくて食生活を変えられない」「運動する時間がない」という声もよく伺います。生活習慣の見直しは、いきなり大きく変える必要はなく、今の生活の中で無理なく続けられる範囲から始めることが長続きのポイントです。数値だけを見て一律に指導するのではなく、一人ひとりの生活の状況に合わせて、現実的に続けられる範囲をご提案します。

生活習慣の見直しで意識したいこと

食事療法・運動療法といっても、何を変えればいいのか分かりにくいという声もよく伺います。特別な食事制限よりも、まずは次のような点を意識していただくことをおすすめしています。

  • 食べる順番(野菜やおかずを先に、主食を後に)を工夫する
  • 早食いを避け、ゆっくり食べる
  • 一駅分歩く、エレベーターより階段を使うなど、日常生活の中で体を動かす機会を増やす
  • 間食や飲み物の中の糖分を見直す

これらは一度に全部を変える必要はなく、続けられそうなものから一つずつ始めていただければ十分です。どこから始めればよいか分からない場合は、診察の中で現在の生活習慣を伺いながら、一緒に優先順位を考えていきます。

こんな場合はどうすればいいか

健診で「境界型」と言われたが、症状は何もない場合

症状がないのは自然なことです。だからこそ、この段階で一度受診し、生活習慣を見直すきっかけにしていただくことをおすすめします。

過去に糖尿病を指摘されたが、その後受診せずに数年経っている場合

症状がないまま時間が経っていても、体の中では変化が進んでいる可能性があります。「今さら受診しても」と思う必要はなく、現在の状態を確認するところから始められます。

家族に糖尿病の人がいて、心配で受診を考えている場合

家族歴があることは、確認しておく十分な理由になります。症状がなくても、一度血液検査で今の状態を確認しておくと安心です。

何科を受診すればいいか

血糖値・HbA1cで「要再検査」「要精密検査」の判定が出た場合や、多尿・口渇・体重減少などの症状がある場合は、内科(生活習慣病を専門とするクリニックを含む)が窓口になります。高血圧や脂質異常症など他の生活習慣病も併せて指摘されている場合は、まとめて相談できる窓口を選ぶと、通院の負担も少なくなります。当院の「生活習慣病ページ」もあわせてご確認ください。

循環器内科で糖尿病を診る理由

「糖尿病なのに循環器内科?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。糖尿病は血管に負担をかける生活習慣病の一つで、進行すると動脈硬化を通じて心筋梗塞や脳梗塞などの循環器疾患のリスクを高めます。逆に、高血圧や脂質異常症など他の生活習慣病を合わせ持つ方も多く、循環器の視点から全身の血管の状態を見ながら糖尿病を管理することには一定の利点があります。血糖値だけでなく、血管全体の健康という観点から一緒に確認できるのが、循環器内科で生活習慣病を診る強みです。

検査・診療にかかる費用の目安

問診・身体診察・血液検査は、いずれも健康保険の対象です。正確な費用は検査の内容によって変わりますので、受診時にご確認いただくのが確実です。

糖尿病は、症状が出てから気づくのではなく、症状が出る前に健診や血液検査で気づくことにこそ価値がある病気です。「症状がないから大丈夫」ではなく、「症状がないうちに確認する」という考え方に切り替えていただければと思います。

健診結果表の中の血糖値やHbA1cの数字は、他の項目に比べて見過ごされがちですが、症状が出ない病気であるからこそ、数字そのものが唯一の手がかりになります。健診で指摘を受けた方、気になる症状がある方、ご家族に糖尿病の方がいて心配な方は、ぜひお気軽に当院にご相談ください。

田村聡一郎

大阪市天王寺区「たむら内科・循環器内科」院長。 大阪市立大学医学部卒業後、大学病院・急性期病院で循環器診療・救急医療に従事。大学院では心エコーを中心に研究し、急性期病院の循環器内科部長を経て開院。医学博士、総合内科専門医、循環器専門医。循環器疾患から生活習慣病・一般内科まで幅広く対応し、患者一人ひとりの生活背景に寄り添い、地域に根ざした安心できる医療を提供する。

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